2025年10月4日、自民党総裁選の勝利後に開かれた両院議員総会で、高市早苗氏があいさつの中で「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて……参ります」と述べました。発言は、党再建のために“全員参加でフル稼働”を求める流れの中で出た決意表明の一節です。翌5日には記者団に対し「皆さん(国民)はワークライフバランスを大事に」と補足し、国民一般に放棄を促す趣旨ではない旨を示しました。本稿では、誰に向けたメッセージか、その狙いと波及、今後の見通しをわかりやすく整理します。
高市早苗さんのワークライフバランスを捨てる発言とは? 国民も馬車馬のように働くことになるのか?国民の不安を完全解説

ポイント
- 主たる宛先は党内の国会議員・党組織と見るのが妥当。
- 国民にWLB放棄を求めたわけではなく、レトリックとしての決意表明色が強い。
- 誤解を受けやすい言葉選びだったため、翌日に補足で線引きを示した。
これは誰に向けたメッセージ?党内か、国民全体か
発言の場は両院議員総会、すなわち党所属の国会議員に向けた内向きの挨拶です。直前・直後の文脈は「党を立て直すには全員で働く」という動員メッセージで、対象は党務・選挙・国会対応に関わる自民党の組織と議員が中心。国民一般や民間企業の労働者に対し、働き方の原則を上書きする趣旨ではありません。まず“誰に”の整理を誤ると、政策転換のシグナルと受け取りやすく、不要な不安が増幅します。
「国民も馬車馬」になるの?誤解されやすいポイントを解消
強い決意を打ち出すレトリックは、しばしば“働き過ぎの称揚”と混同されます。しかし、今回のフレーズは“党内の危機感共有”と“自らも先頭で働く”という自己拘束を示す意味合いが濃いものです。翌日の補足で、高市氏は記者団に「皆さんはWLBを大事に」と明確化。これは国民の健康や生産性向上の観点から、働き方改革・過労死防止の枠組みを維持する立場を示したものと解釈できます。したがって、直ちに“国民も馬車馬”という方向へ政策が舵を切るとは読み取りにくいのが実情です。
タイムラインで振り返る:発言~フォローアップ発言まで
- 10/4(土):両院議員総会あいさつで「WLBを捨てる」発言。党再生を掲げ、全員稼働を促す文脈。
- 同日~:SNSやメディアで賛否。長時間労働助長への懸念の声、決意の表明として評価する声が並立。
- 10/5(日):記者団への補足。「皆さんはWLBを大事に」と線引きを強調。メッセージ運用の修正・明確化が見える。
- 10/6以降:初会見・国会答弁・所信表明などでの説明が焦点に。働き方関連政策との整合性提示が注目点。
高市早苗さんのワークライフバランスを捨てる発言の狙いとは?

ポイント
- 党内の動員と危機感の共有を目的とした“決意レトリック”。
- 国民向けにはWLB尊重を前提に、コミュニケーションで線引きを明示する方針。
- 現場(企業・官庁)に誤解が波及しないよう、実務面での留意点の提示が必要。
党内向けの動員シグナル:全員参加・フル稼働を促すため
政権与党にとって、総裁選後は人事、国会運営、選挙準備、政策パッケージの再設計など、短期集中で片付けるべきタスクが山積します。強い言葉で“自他を縛る”のは、スピードと一体感を生む古典的な組織マネジメント手法です。「自分も捨てる」という自己拘束を宣言することで、トップダウンの動員を正当化し、リソースの総動員を促す狙いがうかがえます。
国民向けの線引き:WLB尊重と党内稼働の両立は可能か
国民生活に関わる働き方改革・健康政策・子育て支援などは、WLB尊重を前提に継続されるべき領域です。一方で、党内の“フル稼働”は限定された時間帯・業務範囲に適用する内部ルール。両者の両立には、①国民にはWLB重視を明言、②党務の負荷増は時限的であると説明、③実際の政策設計・制度運用では長時間労働抑制のKPIを堅持、という三本柱のメッセージが有効です。
企業・官庁へのメッセージ効果:現場はどう受け止めるか
トップ発言は象徴効果が大きいため、現場が「長時間労働回帰」と誤読しない配慮が不可欠です。企業・官庁に対しては、①法令遵守(36協定・労働時間上限)と健康配慮の堅持、②生産性向上のための働き方改革投資(デジタル化・業務棚卸し・会議改革)の継続、③育児・介護と仕事の両立支援の強化、などを明示することが望まれます。象徴的フレーズを“現場の改善圧力”に転化できるかが、政権運営の腕の見せ所です。
まとめ
- 発言の主たる対象は党内で、国民一般にWLB放棄を求める趣旨ではない。
- 翌日の補足で国民はWLBを大事にと線引きが明確化。
- 今後は、国会・会見・政策パッケージでWLB尊重と党内フル稼働の両立をどう設計・説明するかが焦点。
- 企業・官庁は、法令遵守と働き方改革の継続を前提に、発言を“現場改善”の推進力に変えるのが得策。
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